DV被害の妻から伝えたい身近なDVの現実

DV被害の妻から伝えたい身近なDVの現実

配偶者からのDVを3人に一人の女性が経験しているとご存知ですか。DVは決して他人事ではありません。3年間DVを受けた体験から、被害者が自ら抜け出すことの難しさ、周囲の目の大切さを痛感しています。

永山則夫――家族という名の砂漠

永山則夫――家族という名の砂漠

岩木山


堀川惠子『永山則夫 封印された鑑定記録』

今日は一日、布団から出ずにこの本を読みふけっていました。布団から出なかったのは、パーソナリティ障害の夫との離婚話で精神的に参っていたのと、外気温の肌寒さに身体が慣れないからです。永山則夫(のりお)は1968、69年に19歳で4人を次々と射殺。世間を震撼させた犯人の膨大な鑑定記録と録音テープをもとに、犯罪に走らせたものが家族だったと明かしたノンフィクションです。

 

家族の荒涼とした風景

賭け事に狂い家族を捨てた父、育児放棄する母、兄弟からの虐待や無視。少年の人格を歪ませ、犯罪に走らせた原点と、甚だしくは動機までその荒涼とした家族の風景にあったというのです。

この本を私にくれたのは夫です。しばらく前に、いい本で自分は読み終わったからと渡されました。そのまま部屋の片隅に放っていたのを、開いてみたら、ぐいぐいひき込まれて止まらなくなりました。

読んでいて何度も涙が出ました。私の場合、永山則夫と夫に似たところを感じました。普通の読者にとっても本書は十分面白いはずですが、それ以上に感情移入して読んだと思います。

 

凶悪犯の悲しすぎる素顔

たった一人相談に乗ってくれる人が現れれば、もしあのとき気遣ってくれる人がいたら……。たくさんのもしもが起きなかったために、彼は射殺犯への道をひた走り、さらに殺人を重ね、連続射殺犯になってしまうのです。

拳銃で4人を射殺する。しかもわずか19歳で。どんな凶悪犯なのかと思われた永山の本書で明かされる素顔。それは、連続殺人犯のイメージとはかけ離れたものでした。

主題である鑑定記録で、永山は精神的に成熟しておらず、性格神経症であり、犯行時に精神病的な状態だったとされています。神経症はノイローゼで、性格的神経症は、個人の性格の関りが大きいものを指します。

しかし、最終的にこの鑑定結果は司法によってひねりつぶされ、死刑が確定・執行されたのです。家族という環境的要因も「他の兄弟らが……立派に成人している」として、特に重視するのは疑問だとされました。この「立派に成人している」兄弟たちの辿った道も明かされます。

 

虐待は脳を傷つける

一番衝撃を受けたのは、幼児期に虐待を受けた人の脳が損傷を負うという事実です。虐待を受けた人の左側の海馬の萎縮、左脳の発達の遅れなどが解説されています。海馬の委縮により過度に攻撃的、衝動的になったり、アルコール依存になったり、逆にうつ状態になったり、不安にさいなまれたりするそうです。攻撃的からアルコール依存までは夫が、残りの部分は夫の引きこもりの兄弟が該当すると思われます。

そして、私の読んだ本は、このページの角が折られていました。折ったのは、ほかでもない夫です。「自分でも分かるんだ」と思いました。どういう気持ちでページを折ったのかまでは分かりません。

夫は幼いころに母親から包丁で切りつけられ、ケガをしたことがあるといいます。虐待されたのではないかと過去に聞いた際は、頑なに否定しました。傷も浅いものだった、大した話ではないと。ただ、このページが折られているということは、冷静になれば思い当たることがあったのでしょう。

 

頭で理解しても救いにならない怖さ

ただ、頭で理解しても、救いにはなりません。永山則夫も自分の病的な部分と必死で向き合おうとした時期もありつつ、一方で揺り戻しもあったようです。夫も頭では自分の問題を多少理解しているのでしょうが、行動はいつまでたってもDV加害者そのものです。

永山は網走で親に捨てられ極貧の生活を、親元で暮らすようになった青森県西部で育児放棄と虐待を経験しました。夫は都内の裕福なサラリーマン家庭で何不自由なく育ったことになっていますが、家族という密室の実際は、はた目からみたのとは違ったのではないかと感じます。永山則夫の実家の西にそびえていた岩木山と、夫の家の西に威容をのぞかせていた富士山が、私にはダブって見えました。

 

永山則夫 封印された鑑定記録 (講談社文庫)

永山則夫 封印された鑑定記録 (講談社文庫)

  • 作者:堀川 惠子
  • 発売日: 2017/04/14
  • メディア: 文庫
 

 

 永山則夫は獄中で手記や小説を発表しました。印税を遺族に送り続けたといいます。手記『無知の涙』(1971年)は当時のベストセラー。

無知の涙 (河出文庫―BUNGEI Collection)

無知の涙 (河出文庫―BUNGEI Collection)

  • 作者:永山 則夫
  • 発売日: 1990/07/10
  • メディア: 文庫
 

 

小説『木橋(きはし)』で1983年、第19回新日本文学賞を受賞。

木橋 (河出文庫)

木橋 (河出文庫)

 

 

捨て子ごっこ

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