DV被害の妻から伝えたい身近なDVの現実

DV被害の妻から伝えたい身近なDVの現実

配偶者からのDVを3人に一人の女性が経験しているとご存知ですか。DVは決して他人事ではありません。3年間DVを受けた体験から、被害者が自ら抜け出すことの難しさ、周囲の目の大切さを痛感しています。

加害者は「女性を殴ってもいい」という観念を社会から獲得する―DVは防げる(4)

DV加害者の「女性を殴ってもいい」という観念

これまで、被害者がDV加害者をどう見極め、避けるかを紹介しました。今回は加害者の話です。DV加害者にならないために、そしてDV加害者を減らすために何ができるのか。お伝えします。

DVは考え方の問題

DVは、考え方の問題です。

相手を従わせるために暴力をふるってもいい。女は立場が下だから、乱暴に扱ってもいい。俺は稼いでいるんだから、妻を付属物のように扱っていい。

こういう誤った考えに基づいて、加害者は暴力をふるいます。

加害者が精神障害など心の問題を持っていることもあります。ただ、それはDVをする原因ではないと、アメリカ人カウンセラーのランディ・バンクロフトは言っています。つまり、DVをする精神障害者はいる。けれども、精神障害者はDVをするということにはなりません。

私自身の話をします。以前、夫は発達障害ではないかと疑っていました。今は人格障害かもしれないと思っています。夫自身が受診する気がないので、果たしてそうなのかは分からずじまいでしょう。

夫の実家は核家族で、父親は仕事を理由に家庭を一切顧みなかったそうです。しかも、子どものうち、夫とは別の兄弟ばかりひいきにしていました。母親は感情の浮き沈みが激しく、自制心が効きにくい人です。よく子供だけ連れて田舎に帰っていて、そこで夫は祖母に溺愛されました。

今はというと、夫と両親は、絶交状態になることがしばしば。兄弟は実家に引きこもっています。

間違った考えを家庭と社会で獲得した夫

 伝え聞く限りでは家庭が不幸で、それで精神面に問題を抱えてしまった可哀そうな人なんだと思った時期もありました。可哀そうなのは何の理由もなく殴られる自分の方だったのに、加害者である夫に変に同情して、状況を悪化させました

DVをすることは、生い立ちの不幸とは別の問題です。夫の場合、よく帰っていた田舎が男尊女卑の激しい土地でした。また、母親が専業主婦で父親に家計を頼っており、しかも使い込んで消費者金融に数百万の借金を作るような人で、女は能力が低いという思い込みを強めたのだと思います。

大企業の社宅という、男性が稼ぎ頭と扱われる家庭ばかりという特殊な環境も、良くなかったのでしょう。

女は管理の対象であり、男の言うことを聞くのが当然。より稼いでいる方に発言権がある。女が家のことをやるのは当たり前。

両親共働きだった私とは、まったく相いれないこうした考えを押し付けてきました。反論すると、殴られました。

夫は外では、さも女性の社会進出に理解があるかのような顔をしています。でも、実際には女性を自分たち男性と対等だとは思っていません。仕事で一緒になる女性も、結局「女」として見て品定めし、陰でこき下ろしています。

男女が平等な社会ほどDVは起きにくい

DVは、女性が男性に劣らない経済力を獲得している社会ほど、そして男性と対等に扱われる社会になるほど減るのだそうです。そういう意味では、日本はまだDVが起きて当然の社会。

DVは後天的に身につけるものです。周りの大人たちや、テレビや映画、マンガ、音楽など、さまざまなところから、夫は「女は下だ」というメッセージを受け取り続けたはずです。そして「感情を抑えられなければ殴ってもいい」「俺を怒らせる女は蹴散らして当然だ」という誤った考えを頭の中で組み上げてしまったのでしょう。

40代になった夫は、こういう考えを獲得してもう四半世紀以上。それを変えるのは、並大抵のことではありません。やはり最善の方法は、そういう誤った考えを身に付けさせないことです。

私たちの身の回りには、女性を下げ、男性を立てる場面が少なくありません。よくおじさんたちが「女は○×だ」と、実に色んな否定的なことを言います。

もし、男性が女性をひどく扱っていたり、卑下するのを子供が見たらどう思うでしょう。それがおかしいことだと思わずに、当然なんだと勘違いしてしまったら……。

子どもたちをDV加害者にしないために

DV加害者は、半分の割合で、親もそうなのだそうです。つまり、残り半分は両親の間にDVがなかったのに、加害者になるのです。私の夫も後者です。育った家庭にDVはなかったのに、女性に暴力をふるうようになりました。

自分の子供をDV加害者にしたいと思う人は、少ないはずです。私の夫でさえ、そうは望まないようでした。

DVは家族を不幸にし、周りも不幸にします。一度加害者になると、ほとんどの場合、救いがありません(加害者がよほど努力した場合は別です。でも、そういう加害者はとても少ないのです)。

DVを防ぐ。そのためには、自分の子供がDV加害者にならないように育てる、周りの子が加害者にならないように振る舞う、DV加害者を生み出さない社会をつくる――ということが大切なのです。

 

 

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