DV被害の妻から伝えたい身近なDVの現実

DV被害の妻から伝えたい身近なDVの現実

配偶者からのDVを3人に一人の女性が経験しているとご存知ですか。DVは決して他人事ではありません。3年間DVを受けた体験から、被害者が自ら抜け出すことの難しさ、周囲の目の大切さを痛感しています。

義父母との初顔合わせで飛んだ鉄拳―DVは防げる(2)

義父母との初顔合わせで飛んだ鉄拳DVは防げます。被害者になる前に、逃げることが大切です。被害者になって精神を病み、家を出る気力すらなくなってしまったら、救いがありません。夫は結婚前から抑圧的で、やたら電話を掛けて私の行動を把握しようとし、暴言を吐くこともありました。ただ、私に暴力をふるうことはありませんでした。でも、結婚直前に夫は自分の両親(私からみると義父母)に暴力を、あろうことか初顔合わせの場で、ふるったのです。

凍り付く店内

私は椅子の上で凍り付きました。斜め向かいに座っている義母が頭から血のような赤いしずくを滴らせています。「何をするんだ」と義父が声を荒げました。隣で夫は、空になったワイングラスを手に握りしめています。店中の視線が集まるのを感じました。

初顔合わせの場は、落ち着いた雰囲気の店でした。私は初めて義父母に会ううえ、普段は行かない価格帯の店なので緊張し、何を話したか覚えていません。忘れられないのは、2軒目に入ったビアバーでの出来事です。

夫の家族は酒好きで、ビールやワインを次々とあけていました。初顔合わせだからという遠慮は、全くなかったようです。私にとっては人生初のことでしたが、夫はバツイチ。今思えば、最初から家族ぐるみで私のことはテキトーに扱っていたのですね。私には分からない内輪の話も出ていました。3人とも相当酔っぱらっていました。

夫は義母と見た目がそっくりです(中身もそっくりだと、後々気づくことになります)。そのそっくりな2人が、途中から不穏な雰囲気になっていきました。お互い、相手が気に入らなさそうなことを言い募り、「どうしたのかな」と思っているうちに、突然、夫がワイングラスの中身を義母にバシャッと浴びせたのです。

義母は甲高い声をふるわせて、怒っていました。それに義父が加勢し、私は想像だにしない展開にうろたえるだけ。店員さんがおしぼりを持ってきてくれました。

義父は顔面血まみれに

その場を収めて外に出たかと言うと、そうではなく、もっとひどいことになりました。3人はビアバーの真ん中の席で、周囲はお構いなしにけんかを続け、挙句、夫は義父の顔面を殴りつけ、義父が鼻血まみれに。鼻が変な方向に曲がっていました。

なんとか夫を義父母から引き離して店を出たのですが、義父母は後から追いかけてきて、なおも言い募る。必死で夫の腕を押さえつけていました。

夫と義父母は互いに捨て台詞を吐きつけ、何とか別れ、駅の構内に入りました。そして、ホームに上がるエスカレーターに乗る直前に、夫は突如、私にキレたのです。理由は全然わかりません。それで、私を押しのけようとしたものの、あまりに酔っていて、逆によろけて自分で尻もちをついていました。格好悪いと思ったのを覚えています。

暴力が自分に向かうと気づくべきだった

夫が家族に手を上げたこと、私にまで手を出そうとしたことを、私は重く受け止めるべきでした。でも、そうはなりませんでした。夫がかわいそうだと感情移入してしまったのです。夫の兄弟は引きこもりです。ビアバーで見た光景からすると、家族の不和は相当歴史がありそうでした。

私は夫が育った家庭環境の悪さに変に同情してしまい、その後、結婚をやめようとか、別れようとは思いませんでした。数か月後には自分も殴られることになるとは、思いもかけなかったのです。

夫は、結婚して私が逃げにくい状況になるまで、暴力をふるうのを抑えたようです。でもその間にも、今思えば必ず私にも手を出すだろうと思えることが、たくさんあったのです。その予兆に気付かず、あるいは無視し、自分をこんな状況に追い込んでしまったのは、結局のところ私自身でした。

一緒にいる相手に少しでも違和感や、怖さを感じる人は、慎重になるべきです。DV加害者の更生を手がける米国のカウンセラー、ランディ・バンクロフトは著書の中で、専門家の判断より、当事者である女性の勘の方が正しいと言っています

【送料無料】 DV・虐待加害者の実体を知る あなた自身の人生を取り戻すためのガイド / ランディ・バンクロフト 【本】

価格:3,080円
(2020/5/1 15:18時点)
感想(0件)

加害者の育ちが不幸であったとして、だからといって、パートナーに暴力をふるっていいはずなどないのです。加害者が更生するのは、並大抵のことではありません。自分の問題を認識しようとせず、暴力もやめる気がさらさらない。そんな夫の変化を期待し続けた私は、自分自身の人生をどぶに捨てていたと、今になって思います。救われなければならないのは、加害者ではなく、被害者なのです。気がかりなことがあったら、まずは自分を守ってください

 

 

今週のお題「激レア体験」