DV被害の妻から伝えたい身近なDVの現実

DV被害の妻から伝えたい身近なDVの現実

配偶者からのDVを3人に一人の女性が経験しているとご存知ですか。DVは決して他人事ではありません。3年間DVを受けた体験から、被害者が自ら抜け出すことの難しさ、周囲の目の大切さを痛感しています。

DV被害者の住民票の移動は「支援措置」とセットで

DV被害者の住民票の移動は「支援措置」とセットで


DV被害者の中には、10万円の給付金を受け取るため、駆け込みで住民票を移す人も多いのではないでしょうか。その時、忘れてはならないのが「支援措置」の手続き。住民票は家族やそれ以外の人でも入手できるからです。戸籍も家族であれば入手できます。新しい住所を加害者に知られないために、手続きを忘れないでください。

住民基本台帳事務におけるDV等支援措置

正式名称が長いので、役場の窓口では「支援措置」と言えば通じます。目的を、総務省はこうまとめています。

DV等被害者の方を保護するため、住民基本台帳の一部の写しの閲覧(住民基本台帳法(以下「法」といいます。)第11条、第11条の2)、住民票の写し等の交付(法第12条、第12条の2、第12条の3)及び戸籍の附票の写しの交付(法第20条)について、不当な目的により利用されることを防止します。

 

www.soumu.go.jp

DV被害者で、下に該当する本人のみが申請できます。

配偶者暴力防止法第1条第2項に規定する被害者であり、かつ、暴力によりその生命又は身体に危害を受けるおそれがある方

住民票を移す前に準備が必要

転居先の市区町村役場で手続きをします。住民票の移動と同時に、支援措置が始まらないと意味がないので、事前の準備が必要です。役場に行って、すぐできるものではありません。流れはこうです。

  1. 役場の担当課(市民課など)に行って、支援措置申出書をもらう

  2. 警察、婦人センター、相談支援センターなどで措置が必要だと認める、本人の主張に間違いないと書いてもらう(※裁判所や警察から加害者に命令や警告の書面が出ている場合は、これを提出するだけで事足ります)
  3. 役場で申出書を提出する。併せて別居に伴う「世帯分離」と住民票の移動をする

 支援措置申出書は、役場の支所などには置いていないこともあるそうです。ですから、行く前に電話で確認しましょう。

私の経験

私自身、この手続きが現在進行形なので、経験を記します。

まず役所に電話し、支援措置の流れを確認しました。そして、近所の支所には申出書を置いていないため、本庁舎に行くことになりました。

通常の窓口対応の方ではなく、こうした対応を専門にする方から、措置の説明を受け、申出書を頂き、記入の仕方を詳しく説明して頂きました。

私の場合、相談機関は警察の生活安全課です。夫からの暴力をずっと前に相談し、その記録が残っています。また、最近も夫から「お前の居場所なんていくらでも調べることができる」と暴言を吐かれ、泣きながら電話で警察に相談していました。

警察署に電話したところ、その日のうちに対応して頂けることになり、訪れました。DVを担当する方は、基本的に平日の日中しか出勤しません。また、支援措置の申出書を書いてもらうためには、事情の聴き直しもあり、時間がかかるので、夕方遅い時間だと間に合いません。事前に電話し、訪れる時間を調整しておきましょう。身分証明書と印鑑が必要でした。

警察の方がこれまでの記録を見たうえで、再度事情を聴き、支援措置が必要だと判断して頂きました。時間は30分ほどだったと思います。事前の待ち時間を含めて1時間弱かかったので、時間に余裕をもって訪れましょう。

この申出書を役所に提出すれば完了です。その時に、世帯の分離と住民票の移動も手続きします。同居していて夫が世帯主という状況から、世帯の分離(妻も世帯主になります)、そして別居――という流れに手続き上、なります。身分証と印鑑が必要です。

役場の窓口が混雑する時間は避ける

こんな時期なので、感染予防のため、役場の窓口が混雑する時間帯は避けましょう。訪れた役場だと、午前10時~午後2時が混雑し、休み明けの日と金曜日も混むので、避けてほしいとのことでした。

コンビニや自動交付機で住民票がとれなくなる

手続き完了後、戸籍と住民票から、加害者が被害者の新居を追跡することができなくなります。閲覧制限がかかり、住民票をとるのが面倒になるので、そのことは理解した上で手続きしてください。本人が住所を置いている管轄の役所に行かなければ、住民票はとれなくなります。委任状を使った代理人の請求、郵送での請求は原則できません。

期間は1年間

支援措置が決定してから1年間の措置です。延長手続きには、あたらめて支援機関から措置が必要だと認めてもらう必要があります。

債権者や裁判の相手などは閲覧ができる

被害者が債務を抱えていたり、裁判で訴えられていたりする場合、その相手は審査を受けたうえで、加害者と無関係であれば閲覧ができます。

住民票の移動はよくよく考えてから

住民票を移すことで、夫がいつかの時点で、私が世帯を分けた、住所を移したと気づく可能性があります。その時にどういう行動に出るのか、予想できないところはあります。そういうことも含めて、住民票を移すか、移さないか、よく考えて決めてください。