DV被害の妻から伝えたい身近なDVの現実

DV被害の妻から伝えたい身近なDVの現実

配偶者からのDVを3人に一人の女性が経験しているとご存知ですか。DVは決して他人事ではありません。3年間DVを受けた体験から、被害者が自ら抜け出すことの難しさ、周囲の目の大切さを痛感しています。

DVでできないことだらけになった私―DVは社会的損失でもある

DVは社会的損失でもある


私は今年2月に家を出、今はDV夫と別居しています。別居後、仕事の成果に取引先から「いいですね」と言ってもらえるようになりました。最初言われたときは純粋に嬉しかったのですが、何回か言われるうちに気づいたんです。DV被害を脱して、パフォーマンスが上がっているんだなと。DVに遭っていたとき、夫は「お前は何もできない」「俺がいないと生きていけない」と言い続けました。私は、鵜呑みにしてしまいました。できない方へ、できない方へと流され、本当にいろんなことができなくなっていたのです。

 

結婚前の自分の仕事量に驚く

最近、久しぶりに会社員時代のパソコンのデータを見る機会がありました。勤めていた会社は薄給で、私は辞める前の1年ほど副業をしていました。副業としてやった内容が思った以上にたくさんあり、こんなに仕事をしていたのかと我ながら驚いています。会社で週5日フルタイムで働き、平日の夜と休日にやったにしては、相当の量をこなしていたのです。

過去にバリバリ仕事をしていたのを忘れるくらい、DV被害者になってからの私は、ふがいないものでした

束縛と暴力とストレスで何もできなくなる

 結婚に伴う転居で会社を辞め、契約の仕事を見つけました。その職場まで、夫は電話をしてきました。帰りが遅くなる日は、電話口で怒鳴り散らしてきます。職場の廊下で、泣きそうになるのを必死にこらえ、電話が切れるのを待ちました。門限が9時で、通勤時間が1時間はかかる私は、飲み会にも参加できなくなりました。門限を課されたのは、生まれて初めてのことです。

仕事のない日は、とにかく布団から出なくなりました。仕事があっても布団から出られない日が増えました。何もしたくない。夫と話したくない。自分は何もできない。思考はどんどん悪い方へと堕ちていきます。

DV被害者の96%が仕事に支障

 NPO法人女性ネットさやさやのホームページに、DV被害者の仕事への悪影響を紹介しています。

saya-saya.net

 米国オレゴン州のビルズボロ警察は、「74%のDV被害職員が仕事中に加害者からハラスメントを受けている」「DV被害者の28%が仕事を早退したことがある」「DV被害者の56%が仕事に遅刻したことがある」「DV被害者の96%が、虐待を受けて仕事に支障をきたした経験がある」との統計を出しています。

 

DV被害者の96%が仕事に支障をきたしているのです。DV夫という怪物と同居したことで、私は「お前はダメな妻だ」「仕事のできない人間だ」と言い募られ、真に受け、その通りの何もできない人間になってしまいました。

そうは思わなかったとしても、被害者は夫がいつ暴力をふるうか、怒りを爆発させるか分からず、その気配を機敏に察知しようと神経をすり減らします。頭の中のほとんどは、夫のことです。次いつ怒るだろうか、そろそろ殴られるタイミングじゃないかと。それを考えるだけで頭がいっぱいで、仕事は余力でこなすことになります。当然、ろくな出来になりません。

女性の3人に1人は配偶者からの暴力を経験していますから、中規模の職場にはDV被害者がいると考えて間違いないでしょう。そのほぼ全員が仕事に支障をきたしていて、加えて7割が仕事中にも加害者からの干渉を受けていたら……。社員のパフォーマンスが落ちるのは、企業としての損失ですし、もはや社会的損失でもあります。

別居後2か月でできることが増えて驚く

 別居を始めて、一日はこんなに長いんだ、こんなに仕事ができるんだと感じています。それでも、DV被害の前のレベルで仕事ができるまでにはなっていません。何としても、復活したい、3年間の負の連鎖を断ち切りたいと思います。

DV被害に今遭っている方に言いたいのは、あなたにはできることがたくさんある――ということです。DV加害者はあなたのことをこき下ろします。でも、それはあなたのせいではありません。別のパートナーにも、同じことをしています。だから、真に受けないでください。

夫は、DVで離婚した前妻にも、私にしたのと同じことをしました。その人は離婚してから、たくさんの素晴らしい仕事をなさっています。DV加害者と同居を続けることは、あなたの才能と可能性を潰します。あなたの能力をDV加害者というどうしようもない人間に対処するために蕩尽するのは、やめてほしいのです。

DV被害者の支援窓口を利用して

 「自分は稼げないから、夫に頼るしかない」

こう考える方もいるでしょう。私も1月に家を出てから、そういう考えに陥り、一度家に戻ってしまいました。

経済状況は人によって違うので、こうすべきとは言い切れません。でも、あなたが思う以上に、独立して生計を営む手立てはあるのです。条件次第で、行政支援に頼ることもできます。福祉のお世話になるのは、恥ずかしいことではありません。

財産分与で、結婚後に増えたお互いの財産を、二つに分けることもできます。一人で考えても、DV被害者は精神疾患をかかえることも珍しくなく、思考が悪い方へ流れがちです。自分の状況を客観視するためにも、DV被害者の相談窓口を利用してみてください

 

dvdiary.hatenablog.com

 

コロナウイルス対策として、24時間の相談窓口も整備されました。メールやSNSからも相談できます。

soudanplus.jp

私が家を出た頃より、良くなる部分は良くなっています。こういうのが当時あったら、あんなに苦しまずに済んだのにと思うくらいです。どうかあきらめずに、1人で抱えずに相談してください。