DV被害の妻から伝えたい身近なDVの現実

DV被害の妻から伝えたい身近なDVの現実

配偶者からのDVを3人に一人の女性が経験しているとご存知ですか。DVは決して他人事ではありません。3年間DVを受けた体験から、被害者が自ら抜け出すことの難しさ、周囲の目の大切さを痛感しています。

DVは精神の殺人でもある―止まらなかった自傷行為

DVは精神の殺人でもある

ベランダに干していた洗濯物が、エレなし高層階での生活に飽きたのか、川に向かってダイブしました。持ち主が何もかも嫌になり、自棄(やけ)を起こしているのを機敏に察知して、逃げたのでしょうか。ただ、残念ながら川べりのフェンスに引っかかって未遂に終わったので、救出してきました。お陰で洗い直しです。

もともと自傷行為はしたことがなかった

夫は何であんな暴力人間に育ったのか、自分は何でこんな目に遭わないといけないのかと、つらつら考えてしまいます。別居してから、自傷行為に及ぶことは何とか今までないのですが、今日はちらっと頭をかすめてしまいました。

私はもともと、自傷行為は全くしませんでした。夫からのDVが始まるまでは。夫が暴力までいかないけれど、ひどく罵ったり、威圧した後に、私は手近にあるものを掴んで自分を衝動的に殴るようになったのです。台所にある麺棒とか、洗面所のドライヤーとか、寝室のアイロンとか。目の前に星が飛ぶくらい殴ることもありました。後頭部がたんこぶだらけで、枕に当てられない日もありました。

なぜ殴るのかは分かりません。耐えられないから、やるのです。やっても何のいいこともありませんが、殴ることで何とか自分を保っていました。夫からは「気持ち悪い」と言われました。原因が言うなって感じですが。

DVは万病のもと

前回は、DVによる殺人の話をしました。殺人まで行かない身体的な傷の話をすると、私はDVで身体に傷を負い、慢性頭痛にもなり、泣きすぎて副鼻腔炎にかかっています。厚労省によると、ほかに背部痛などの慢性疼痛、食欲不振、体重減少、機能性消化器疾患、高血圧、免疫状態の低下などが報告されているそうです。

www.e-healthnet.mhlw.go.jp

 

つまり、DV被害者は新型コロナウイルスにかかりやすい……かもしれません。私は夫と同居していたころ、全然健康ではありませんでした。

妊産婦の14%にDV被害のリスクという衝撃

そして、先ほどの厚労省のサイトを見ていてぞっとしたのが、こちらの記載。

妊娠中のDV被害は特に注目されており、母体の被害だけでなく、早産や胎児仮死、児の出産時低体重も報告されています。日本でもDV被害のリスクを有する妊産婦は全体の14%以上存在し、特に10代の妊産婦のDV被害が際立って高い頻度になっています(日本産婦人科医会による調査)。

「日本でもDV被害のリスクを有する妊産婦は全体の14%以上存在し」って。……え!?DV被害者の私が驚いていたら、ダメなんでしょうけど、こんなにいるなんて。妊婦が暴力をふるわれるなんて、信じたくありません。でも、DV加害者の特性を考えれば、相手が妊娠していようが何だろうが、態度を変えるわけがないことはよく理解できます。妊産婦にもDVが及ぶことの危険性って、もっと社会が共有すべきではないでしょうか

DV被害者はうつ病PTSDが極めて多い

そして本題の精神面。厚労省のサイトからの引用です。

DV被害者に最も多い精神健康障害はうつ病と外傷後ストレス障害(PTSD)であり、シェルターに逃げてきた被害者に対する調査では、うつ病は4割から6割、PTSDは3割から8割の被害者に診断されます

うつ病PTSDの割合がこんなに高いんですね。家にとどまったままの人の精神障害の割合も、同じか、もっと高いのではないでしょうか。

うつ病PTSD以外にも自殺傾向・不安障害・身体化障害・アルコールや薬物乱用がしばしば認められます。また長年の暴力被害により、話がまとまらなくなっていたり、極端に自信を喪失していたり、過度に自責的になったり、人を信用できなくなっている被害者も少なくありません。

私は自信喪失と自責的になる、人を信用できなくなるに該当します。人というか、男性に対して、この人はパートナーに暴力をふるうだろうかということを、考えてしまうようになりました。

被害者はまともな精神状態ではいられない

DV被害に遭っている方は、自分がまともな精神状態ではないと思った方がいいです。私は、全然まともではありませんでした。だから、自力で逃げようとはしなかったのです。自分がおかしくなっているときちんと認識できなかったので、なおさら辛かったです。

最後に家を出るきっかけになったのは、金属製のアイロン(昭和の時代っぽい、大きくて重いやつ)で頭をガンガン殴ったことでした。すごい衝撃でよろけて倒れかけてもまだ殴っていたのを夫が止めに入り、勢い余ってアイロンが夫の足に当たりました。夫は痛がった挙句(本当はそこまで痛くなかった気がしますが)、私に馬乗りになって殴る、つかむ。私は左目が眼球打撲。しばらくウサギみたいな赤い目をしていました。そうなって初めて、自分が追いつめられ相当おかしくなっていると認識し、怖くなりました。身内に相談し、それを知った夫に家を叩き出され、警察に相談し、今に至ります。

DV被害者は逃げないので周囲の支えが必要

DVに気づいても止めに入らず「ひどかったら、被害者は逃げるはずだから、大丈夫だろう」と思っている方、あるいはそう思い込もうとする方が多いのではないでしょうか。それは間違いです。

多くの被害者は、暴力がエスカレートしても逃げません。私自身は、いつか夫に殺されるという将来を覚悟していたところがありました。

家の中は、外に漏れ聞こえてくるよりも、もっとひどいのです。気づいた時点で、空振りでもいいので、DV相談窓口といった関係機関に相談してください。お願いします。