DV被害の妻から伝えたい身近なDVの現実

DV被害の妻から伝えたい身近なDVの現実

配偶者からのDVを3人に一人の女性が経験しているとご存知ですか。DVは決して他人事ではありません。3年間DVを受けた体験から、被害者が自ら抜け出すことの難しさ、周囲の目の大切さを痛感しています。

コロナウイルスでDV被害がどうなっているか

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コロナウイルスの影響による外出自粛や経済的な困窮で、DVが国内外で増えています。何が起こっているのでしょうか。被害者を救うために何ができるのでしょうか。

海外でDVの通報が2、3倍に

感染拡大が日本より早く進んだ中国と欧米でDV被害の増加が報告されています。DVの相談が中国で通常の3、4倍になった、フランスで外出規制が始まった最初の一週間で通報が3割増しになったと報道されています。

www.nishinippon.co.jp

mainichi.jp

国内では、昨日の記事で紹介したNPO法人全国女性シェルターネットが、感染を心配し行政の窓口での相談を思いとどまる人が増えている、夫と子供が家庭にいるために電話相談が困難になっていると訴えています。

http://nwsnet.or.jp/statement/20200330.pdf

DV被害者は日ごろから孤立させられている


DV被害者は、加害者により人間関係を狭められ、常日頃から孤立しがちです。なぜなら、被害者が人づきあいが多いほど、DVが発覚したり、被害者がDVはおかしいと気づく可能性が高まるので、加害者は被害者の交友関係を断とうとするのです。私自身もそうで、結婚の前後で交友関係が一変しました。夫は必ず9時までに帰宅せよと門限を課し、私は遅れることがしばしばで、そのたびに怒鳴られ、殴られました。
夫の狙いは結婚後ほどなく実現します。私は、夫と同席する飲み会しか参加しなくなり、日中に友人に会うことすらやめました。友人に会うと伝えるたびに夫は「楽しんできたらいいよ」と言うのですが、その言葉は明らかに心からのものではありません。以前のような親戚付き合いもなくなりました。
夫は「すべてはお前がそう決めてやったことだ」と言います。「お前は友人も、声をかけてくれる人もいない。だから、自分が面倒を見てやるしかないんだ」と。これを鵜呑みにして耐え続けているDV被害者は、多いと思います。私もかつてその一人でした。


感染拡大で一層孤独になる被害者


家に閉じこもる生活で、孤立は一層強まります。全国女性シェルターネットが要望書に記しているように、SNSでの相談を可能にするのは、一つの手でしょう。中国にはすでにそういう仕組みがあるそうです。また中国は、感染拡大の時期に、ネットやSNSでDVに遭ったらどうするかというPRを相当やったようです。
日本でも支援の強化を切に望みます。ですが、私はそれ以上に、皆さんにDVにもっと敏感になって頂きたいと思うのです。DVを見かけて迷わず通報できる人というのは、まだ少ないのではないでしょうか。


DVは被害者のせいではない


DVの通報をためらう理由は、家庭内の問題だから、面倒に巻き込まれたくない、被害者に問題があるのかもしれない――などではないでしょうか。被害者にも問題があるのではということから言うと、これは違います。DV加害者の多くは、相手が変わってもDVを繰り返します。
私の夫がそうで、DVにより離婚に至るのは、私で2人目です(まだ離婚まで至っていませんが)。耐えられなくなった妻が家を出、本人が居座るというパターンまで同じらしく、精神的にボロボロな私に比べ、夫は至って元気です。


暴力で支配するのが楽だから繰り返す


もちろん、私は欠点の多い人間です。行動が遅いとか、不器用だとか、言い出すとキリがないです。ただ、そのことと、夫が暴力をふるうことに因果関係はありません。DVをするのは、楽だからです。暴力をふるうことで、相手を自分の思い通りに動かせたら、楽ですよね。相手に無理をさせて、自分は好きなようにふるまえるわけですから。
夫が怒る理由は、自分が使いたいときに洗面所を使っている、おかずの組み合わせがおかしい、勝手に物を動かしたとか、最初は些細なことでした。のちに、私の帰宅時間が一定でないのが気に食わず、仕事を辞めさせ、フリーランスにしたことで、稼ぎが悪いという怒るためのもっともな理由ができました。仕事を辞めさせた時も、夫は辞めろとはひとことも言っていません。「お前が自分で辞めた」と今も言うはずです。
被害者が加害者の考えを内面化することは、また日を改めて書くつもりです。


被害者のせいではないと伝えて


話を元に戻すと、DVは加害者のせいで起きるので、加害者を慮る必要はなく、むしろそうすると加害者の思うつぼです。少なくない被害者が、加害者の論理にからめとられて、悪いのは自分だと思いこもうとしています。ですから、そうではないということを周囲から伝えてほしいのです。
面倒に巻き込まれたくないというのは、分かるような気もします。ただ、通報や相談で、情報源は秘匿されるはずです。立地上、通報したら自分がやったと特定されかねない場合もあるかもしれません。行政の相談窓口は基本的に匿名での相談ですから、場所は明らかにせず、起きていることを伝え、今後注意すべき点をアドバイスしてもらうというだけでもよいと思います。


ひどい状態でも被害者は声を上げられない


何より、通報や相談をしなかったために、傷害や殺人にまで発展し得ることをよく考えて頂きたいのです。そこまでひどい状態だったら被害者が自ら相談するはずだと思うでしょうが、残念ながら、なかなかそうはなりません。このことは、千葉県野田市の女児虐待事件で法廷で赤裸々に語られています。DVを受け続けた妻が夫による子どもの虐待に反抗できず、子供を死に至らせた痛ましい事件です。ハフィントンポストの連載をご覧ください。

www.huffingtonpost.jp

DVが命にかかわることで、子供がいる場合には児童虐待にも転じかねないことを、コロナウイルスの流行する今こそ知ってほしいと思います。

 

DV・虐待加害者の実体を知る

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