DV被害の妻から伝えたい身近なDVの現実

DV被害の妻から伝えたい身近なDVの現実

配偶者からのDVを3人に一人の女性が経験しているとご存知ですか。DVは決して他人事ではありません。3年間DVを受けた体験から、被害者が自ら抜け出すことの難しさ、周囲の目の大切さを痛感しています。

「こんなんで障害なのか」とパーソナリティ障害の夫は言う

「こんなんで障害なのか」とパーソナリティ障害の夫

夫は自己愛性パーソナリティ障害です。2度の結婚でDVにより別居に至っています。診断がついたのが一ヶ月ほど前。そのときに「こんなんで障害だったら、世の中の人はほとんど障害があるんじゃないか」と言いました。3年間DVに遭った被害者としては、神経を逆なでされる発言ですが、冷静に考えるとその通りでもある気がします。精神科医シロクマ(熊代亨)さんのブログ「続・発達障害のことを誰も知らなかった社会には、もう戻れない」を読み、共感したので、自分の思いをつづります。

 

いろんな障害が認知される社会の息苦しさ

p-shirokuma.hatenadiary.com

シロクマさんのブログの要旨は、発達障害*1という概念が知れ渡ったことで、早期発見や適切な治療につながった。「発達障害はサポートされるべき」という考えが広まる一方で、そのサポートは医療や福祉や学校がすべきものとみなされるようになった。 

 

ちょっと難しい議論だったので、このブログにつながる「発達障害のことを誰も知らなかった社会には、もう戻れない」も読みました。

p-shirokuma.hatenadiary.com

発達障害がよく知られていなかった時代に、変わった人、ちょっと困った人として社会で包摂してきた人たちが、発達障害の人と認知されることで社会からつまはじきされるようになってしまった。発達障害境界性パーソナリティ障害などが広く知られるようになって、必ずしもいいことばかりではない。……こういう主張だと感じました。

これまで何となくぼんやり感じていたことが明白に書いてあって、腹落ちしました。発達障害も、パーソナリティ障害も、社会との適合の度合いによって診断が出ます。明白に白黒つくものではありません。

 

巷にあふれる“障害”

身近に、障害の認知度の向上を体現したような家族がいます。

知り合いの4人家族は、片方の親が統合失調症です。まだ精神疾患への認識が薄い時代に症状を悪化させました。精神病院に長期入院しなければいけないレベルに至るまで、精神科を受診するということを誰も考えませんでした。そういう意味では、今だったらこの方と家族は、こんなに苦しまずに済んだだろうにと思います。

そのお子さんが、最近、発達障害だと診断されました。就職して何年もたっており、結婚して子供もいます。本人が不調を感じて精神科にかかるようになり、最初は診断がつかなかったけれども、何軒目かで発達障害と診断されたそうです。

この人は、結構なグレーゾーンなのだと思います。自分で何らかの障害を確信したために、診断が出るまでクリニックを変えて通ったようです。診断が出たことで長年のモヤモヤがとれて、前向きに歩めているようなので、結果オーライですが。診断がつくか、つかないかのレベルの発達障害だと、診断がついたせいで、気落ちしたり、周囲から嫌がられたりもするだろうと思います。診断が出た当初は、そのことを心配しました。

そして、もう一人のお子さんは、双極性障害躁うつ病)のⅡ型ではないかと思います。ブラック企業で親の精神疾患も含めて人格を否定され、過労が重なったため、精神的に壊れていくのを見てきました。今は転職して快方に向かいつつあるのかなと感じています。この人の場合、精神科に行かなかったのは正解なのか、不正解なのか……。行っていたら、ブラック企業を早く退職できたかもしれませんが、転職活動はできなかったはず。精神に負荷がかかってしまったけれども、転職できた今が結局良かったのかなと感じます。

何が言いたいかというと、障害の診断が出ることは、必ずしも問題の解決にならないと思うのです。

 

診断がついても必ずしも救いにならない

夫に話を戻します。自己愛性パーソナリティ障害を夫の実家が疑わなかったのはおかしいと、私はこれまで憤っていました。ですが、夫は40代前半、義両親は60代半ばですから、年代的に致し方ないところはあるかもしれません。

もっと言うと、義母も夫と極めて似た特性を持っています。プライドが高く、容姿と見栄えに強いこだわりがあり、認知、感情、衝動コントロールに問題があります。共感性の薄さという点では、義父も問題を抱えているようです。加えて、夫の兄弟は実家にひきこもったまま。

夫からのDVでカサンドラ的症状*2を来たしている私も含め、精神科にかかれば、皆それなりの診断がついてしまうでしょう。でも、それで幸せになれるかというと、そうではない。

私自身、診断がつけば楽なのにと思うことはあります。ただ、近親者の精神疾患の治療を見て、診断がつくことが解決にならないのも知っています。

 

人口の数%とか1割以上が障害だったとして、それでどうしたいのか

ちょっとおかしい人を「そういう人」として区分することは、正しいようでいて、根本的な解決にはなり得ないと感じるのです。

発達障害は10数人に1人とか、10人に1人とも言われます。パーソナリティ障害はアメリカで人口の15%という研究結果もある*3そうです。それだけ多くの人に“不適合”というラベルを貼って、それから、どうするのか。

「あの人は発達障害だ」とか「あの人はパーソナリティ障害だ」とか言って済ませられる人にとっては、“不適合”をつまはじきできるシステムは、便利かもしれません。ただ、“不適合”が増えるほど、“不適合”の周りで苦労する人も増えるのです。

「こんなんで障害なのか」と言っている夫が障害と認められたことは、私にとって、何の解決にもなりません。ただのDV夫が自己愛性パーソナリティ障害のDV夫に変わったことは、救いでもなんでもないのです。

夫の症状を客観的に見れるようになった面は、あります。ただ、障害を克服しようとしている精神疾患の夫を捨てるのかという声が、耳の中でこだまするようにもなりました。

なので、シロクマさんの『健康的で清潔で、道徳的な秩序ある社会の不自由さについて』という新刊が、すごく刺さるのです。

 

健康的で清潔で、道徳的な秩序ある社会の不自由さについて

健康的で清潔で、道徳的な秩序ある社会の不自由さについて

  • 作者:熊代 亨
  • 発売日: 2020/06/17
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

  

 

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*1:

発達障害アスペルガー症候群、注意欠如・多動性障害(ADHD)、学習障害、チック障害、吃音(症)などを含みます。生まれつき脳の一部の機能に障害があるという点が共通しています。

www.mhlw.go.jp

*2:カサンドラ症候群は正式な医学名ではありません。家族がアスペルガー症候群であるために、情緒的な相互関係を築きにくく、不安や抑うつといった症状が出る状態です。

*3:

www.mhlw.go.jp