DV被害の妻から伝えたい身近なDVの現実

DV被害の妻から伝えたい身近なDVの現実

配偶者からのDVを3人に一人の女性が経験しているとご存知ですか。DVは決して他人事ではありません。3年間DVを受けた体験から、被害者が自ら抜け出すことの難しさ、周囲の目の大切さを痛感しています。

FRIDAY「コロナDV」報道にDV被害者が感じる違和感

コロナウイルスの影響による外出自粛や経済的な困窮で、DVが増えています。DV被害者の目から見ると、マスコミの報道ぶりは、DV加害者の肩を持つものだと感じます。特に、読んで何とも言えない気持ちになったのが、FRIDAY DIGITALに4月8日に載った記事です。

headlines.yahoo.co.jp

 本当に一般の人が起こした悲劇なのか

「外出自粛を余儀なくされている一般の人が実際に起こしたDVの悲劇だ」と言いながら、告白するのは中堅出版社の社員。つまり、内輪ネタ。引っかかりを感じながらも読み続けると、延々、妻に暴力をふるった社員の言い訳が続きます。ストレスが積み重なり、妻の遠慮会釈ない言葉についキレて、テーブルの上の食器を払いのけて、妻のほおを殴った、反省していると。

あなたも同情するでしょ、という感じで書いてあります。でも、待ってください。普通の人がどんなにストレスがたまったからといって、食器をひっくり返して妻を殴るなんて、あるでしょうか。

内輪の人に取材しているというか、おそらくネタの提供を受けているのですから、被害者である妻にも話を聞いて裏をとるくらい、簡単にできたはずです。なぜ、それをしないのでしょうか(記事を読む限り、妻の主張は皆無です)。

DV加害者は悲劇の主人公を装う

DV加害者は嘘をつきます。その話を聞くときは、事実の確認が必須です。加害者は自分が被害者によって苦しめられている悲劇の主人公であるかのように語ります。

アメリカでDV加害者の更生を手掛けることで有名なランディ・バンクロフトさんは、まだ経験が浅かったころ、DV加害者の言うことを鵜呑みにしてしまったと、著書の中で反省の言葉を述べています*1

加害者は自分が悪くないかのように主張したり、更生プログラムを無事修了するために反省して生まれ変わったかのように見せかけたりするそうです。その嘘は、被害者にも話を聞くことで明らかになります。

FRIDAYで取り上げている社員に話を戻すと、そもそも、今回が最初だったのかという疑問があります。この妻に手をあげるのが最初だったとしても、過去に女性に暴力をふるったことはあるかもしれません。DVには至らなかったものの、モラハラ夫である可能性も高いと思います。

加害者の一方的な告白を事実であるかのように載せた時点で、事実を伝えるというメディアの使命を放棄しています......。こう言ったら、言い過ぎでしょうか?

DV加害者の話を鵜呑みにしてはいけないということは、私のような専門家でも何でもない人間であっても、調べれば分かることです。そんな基本も押さえずに記事を載せたのは、ただ「コロナ×ストレス=DVという悲劇」という図式に落とし込んで、読者の関心を引きたかったからだと感じます。

コロナだからDVは許されるのか

「ストレスが増えるからDVが増える」という安易な論調は、FRIDAYに限らず見られます。DVは、コロナウイルスのせいで顕在化したにすぎません。もともとDVをしていたり、モラハラだったり、女性のことを低く見ていたりする人が、暴力をふるっているのだと思うのです(DV加害者のほとんどは男性なので、男性から女性への暴力に絞って書いています)。

DVは許しがたいものだという認識は、残念ながらそれほど共有されていないようです。だからこそ、コロナウイルスの影響下のDVや、殺人が、抑止というよりは単に同情を呼ぶ目的で喧伝されるのだと思います。

www.fnn.jp

パートナーへの暴力は、いかなる理由であれ、許しがたいものです。それを、この機会に改めて認識してもらいたい。当事者として、切に願います。