DV被害の妻から伝えたい身近なDVの現実

DV被害の妻から伝えたい身近なDVの現実

配偶者からのDVを3人に一人の女性が経験しているとご存知ですか。DVは決して他人事ではありません。3年間DVを受けた体験から、被害者が自ら抜け出すことの難しさ、周囲の目の大切さを痛感しています。

DV被害者はなぜ逃げないのか 七つの理由

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なぜDVをずっと、ひどいと何十年も受け続けて、逃げないのか。普通の方はこう思うでしょう。私自身、夫から3年にわたって暴力を振るわれながらも、逃げませんでした。なぜ逃げられない、別れられないのか、お話しします。逃げない被害者も悪いと切って捨てるのは、やめて頂きたいのです。

 

加害者の考えを内面化してしまうから

これはDV被害者に限らず、ブラック企業に勤め続ける人なども当てはまることだと思います。加害者は暴力と暴言、モラルハラスメントで人を支配しようとします。そういう手練手管に非常に長けた人です。

もし、そういう人だと気付かずに好きになってしまったら……。加害者は常に爆発する理由を探しています。被害者にとっては地雷原を歩くようなもので、加害者はすぐ爆発し、しかも自分が正当であるかのように言い立てます。反論すると、暴力がエスカレートします。

加害者は圧倒的に男性なので、ここでは夫が加害者の場合の話をします。男女間の体力の差は圧倒的です。殴られたり、蹴られたりしたら、ひとたまりもありません。

私の場合、夫との身長差は約30センチ。体重は2分の1強。そんな相手を力で征服して何が誇らしいのかさっぱり分かりませんが、とにかく夫はすぐ激高し、手を出します。私は反論してエスカレートするのは避けたいので、ひたすら謝ります。殴るのをやめてからも、自分が正しいことを夫は主張し続けます。「ハイ、ハイ」とひたすら聞く私。

最初は自分にも悪いところがあるかもしれないと思いつつも、夫がおかしいとも思いました。それを口にしたこともあります。すると、また切れます。相手は「あなたが正しいです。私が悪うございました」という答えしか欲していませんし、認めません。

そんな状態が続くうちに、徐々に自分の頭の中に夫の考えが侵入してきたところがありました。変だと思い続けることもありましたが、夫の考え方を内面化してしまった部分が少なくありませんでした。

加害者の考えを内面化する理由は、私は二つありました。一つは、相手からの洗脳。繰り返し、そう主張され、体でそう覚え込まされたから(夫はスポコンものが大好きでした)。もう一つは、夫が怒るきっかけをできるだけ把握し、これを言ったら怒るだろうなとか、そろそろ怒るタイミングだとか分かるようにならなければ、危険にさらされるからです。

悲しいかな、怒るタイミングを結構正確に予測できるようになりました。そして、そろそろ切れそうだという時は、わざわざ自分で相手が怒りそうなことまでするという献身ぶりでした。相手がいつ怒るか分からない状態に耐えられないから。これは、多くの被害者に共通する行動だそうです。

いいときもあるから

「ハネムーン期」という言葉をご存知の方も多いと思います。DVの一般的な説明として、ストレスが蓄積する「蓄積期」→激しい暴力をふるう「暴力爆発期」→謝罪して極度に優しくなり二度と暴力を繰り返さないと誓う「ハネムーン期」ーーの三つが繰り返すとされます。

夫の場合、謝罪も、暴力をしないという誓いも一切しませんでしたが、優しくなったのは確かです。プレゼントで人の機嫌がとれると思っていたらしく、ブランド物のアクセサリーやバッグを年に何度もくれて気持ち悪いくらいでした。

話が脱線しました。優しくなる時期があるために、別れる決心がつかないというのがあります。このまま良くなるんじゃないかとか、本当はいい人なんだと加害者に期待してしまうのです。

正常な精神状態でなくなるから

DVを受け続けると、うつ病といった、精神面の不調を抱える人が増えるそうです。私自身、別居前には、ひどい頭痛で病院に通いました。精神科にはまだかかっていませんが、診断書をもらおうとすれば、いつでももらえるんじゃないかと思います。無気力になる、何も決められなくなる、しょっちゅう風邪をひくという状態で、ひと月に何日かは寝込んでいました。今も、夫からひどいメールが来たりすると、それまで元気だったのが、途端にそういう状態に逆戻りします。

人に相談しづらいことだから

DVはものすごく人に相談しづらいです。親はもちろん、親戚も、友人、知人も含め、簡単に相談できることではありません。少なくとも、私はそうでした。迷惑が掛かるとか、分かってくれないんじゃないかとか、恥ずかしいとか、相談を思いとどまる理由がいくらでもあります。私の場合、「自分が我慢すればいい」と思い込もうとしていました。

人間関係を狭められるから

加害者は被害者の人間関係を断ち切り、追い込みます。自分には夫しかいないと思い込む状況を作ります。

経済的に依存している、あるいはさせられるから

これは男女の賃金格差も影響します。専業主婦だと経済的に夫に依存しますし。仕事をやめさせることも珍しくありません。

私の場合は、夫の方が圧倒的に稼ぎがよかったです。かつ、私が正社員だったのをやめさせ、契約の仕事もやめさせと、社会からどんどん切り離されました。いずれも、私が夫の意をくんで、先回りして自分で決めたことではありますが。

子どもがいるから

これはあまり説明しなくてもお分かり頂けると思います。

 

こうしたさまざまな理由が逃げることの妨げになります。もし身近で逃げられない人がいて、理由をもっと深く知りたい場合は、『DV・虐待加害者の実体を知る』をおすすめします。加害者の行動や心理と、被害者が陥りやすい状態を分かりやすく説明しています。

DV・虐待加害者の実体を知る

DV・虐待加害者の実体を知る

 

 

加害者は、DVとモラハラのプロです。被害者は孤立させられ、追い詰められます。逃げられないのは、それなりの理由があってのことだと、多くの方に知って頂きたいと思います。周囲がDVに敏感になって気付くということが、救済に役立つのは、こういう理由からなのです。

私の夫は、ケガが見えないところにできるよう、手を出していました。それでも酒を飲んで暴力をふるうと、顔面とか、眼球とか、夏場に露出する腕とかに、あざができることもありました。見つけられると困ると思う一方、見つけてほしいという願望もありました。そんな気持ちでいる被害者に、手を差し伸べてほしいのです。