DV被害の妻から伝えたい身近なDVの現実

DV被害の妻から伝えたい身近なDVの現実

配偶者からのDVを3人に一人の女性が経験しているとご存知ですか。DVは決して他人事ではありません。3年間DVを受けた体験から、被害者が自ら抜け出すことの難しさ、周囲の目の大切さを痛感しています。

『他人を攻撃せずにはいられない人』を読む

 

精神科医の片田珠美『他人を攻撃せずにはいられない人』PHP新書を読みました。もっと早く読めばよかった……。身の回りに一緒にいるとなぜか不快感が増す、息苦しさを感じさせる人がいたら、ぜひ手に取ってほしいです。

  

2年の間に28刷(!)

書店で片田珠美『子どもを攻撃せずにはいられない親』*1が平積みしてあり、何となく手に取って、シリーズ物であり、『他人を攻撃せずにはいられない人』というまさに夫のことを書いているだろう著書があると知りました。

「攻撃性の強い人」に痛めつけられたターゲットを診療した経験から、「攻撃性の強い人」がどう相手の心を壊していくか、何のためにそんなことをするのかをつづっています。こういう人は会社の上司の場合もあれば、友人、家族、ママ友、近所の人などあらゆるところにいます。そんなとんでもない人たちに困っている人への処方箋も示されます。

なんとこの本、2013年出版で、15年の時点で28刷。今は第何刷まで行っているのでしょう。しかも図解バージョンもあり、漫画化されています。す、すごい……。世の中「攻撃性の強い人」と、それに困っている人がごまんといるんですね。

 

罪悪感を抱かせる達人

夫のような自己愛性パーソナリティ障害を念頭に置いて執筆した本なのかなと感じます。

攻撃性の強い人は「罪悪感を抱かせる達人」だとあります。

 

彼らは、独特の言い回しが特徴的である。「あなたがもっと気をつけていれば、こんなことにはならなかったのに」「疑ってみるべきだったのに」「そんなことは、みんな知っているのに」というふうに、相手の不注意や無知のせいにするのがうまい

 

これは、夫にさんざん言われました。そして、理不尽に感じても、夫の言う通りかもしれないと思ってしまいがちでした。夫婦関係は愛と信頼の上に成り立っていて、相手が単に攻撃したいがために攻撃してくる可能性を考えなかったのです。この点は下のように指摘しています。

 

特に、家族、あるいは恋人や友人のように、愛情や友情で結ばれているはずという幻想の上に成り立っている関係では、真の意図が一層見えにくくなる。(中略)あなただって、あなたを「愛している」と言っている人間が実はあなたを支配したいとか、利用したいという欲望に突き動かされているなんて、信じられないはずだ。

 

まさにこれです。私もずいぶんおめでたかったですね。今振り返ると。

 

いわゆる「良い人」がターゲットに

ターゲットになりやすい人も記されています。

 

周囲からの期待にできるだけ応えようとするので、常に誰かの役に立とうとするし、誰かの犠牲になることさえいとわない。いわゆる「良い人」なのだが、こういうタイプこそ、攻撃欲の強い人にとっては格好のターゲットになる。支配するのも、操作するのも、とても簡単だからである。

 

私は残念ながら、これです。もともとそうだったわけではなく、色々あって、自分の性格の偏りや嫌なところを認識するようになりました。素の自分に欠点が多いので、何とか「良い人」になろう、人の期待を裏切らないようにしようとしてきました。結果、抵抗しなさそうな相手を求めていたDV夫のターゲットになったわけです。

 

目標は支配と破壊

攻撃性の強い人の究極的な目標は、支配と破壊なのだそうです。

 

こういう人の究極の目標は支配であり、他人のことなど考慮せず、自分の思い通りに何でも決められるような居心地の良い状態を維持すべく策を弄するのだが、こうした意図を巧妙に隠蔽する

 

下のような言葉で覆い隠すといいます。

 

「私は、ただあなたに幸せになってほしいだけ」「あなたが仕事ができるようになるようにと思って助言している」「あなたのためを思って言っている」「あなたを助けたいからこそやっている」

 

これ、全部夫が言っていた言葉です。私のためを思っているからこそ殴るのだそうです。「殴ったのはいけなかったけれど、こういう思いがあったのは確かだ」と別居後もいまだに言っています。

 

強い自己愛で自分は善人だと思い込む

 

ときには、攻撃欲の強い人が自分自身の悪意に気づいていないこともある。強い自己愛ゆえに、自分は心優しい善人だと思い込んでいるので、無自覚のまま相手を傷つけたり壊したりする

 

恐ろしいことです。夫はこれに当てはまります。

結婚後、夫は私に午後9時という門限を課しました。職場から家まで1時間以上かかります。飲み会は言うに及ばず、知人との夕食すら無理です。飲み会に出ていると、8時ごろに携帯にすごい頻度で電話してきて、帰り道、ずっと電話口で怒鳴り続けます。飲み会、特に歓送迎会に出るとなると「どこにそんな金があるんだ」と言います。

友人と会う時も「ゆっくりして来たらいいよ」と必ず言いますが、本心からではありません。私は知人とも友人とも、ほとんど連絡しなくなりました。これがDV加害者の常とう手段だということを私はランディ・バンクロフトの著書*2を読んで初めて知ることになるのですが。

夫に何度も指摘しましたが「俺は門限は課したけれど、それだけだ。友人ができないのは、お前の性格の問題だ」と数日前も電話口で言っていました。この期に及んで、よくまだそんなことを言えたものです。

 

根性曲がりにつける薬はない

最終章は「処方箋」です。これは攻撃性の強い人への処方箋ではなく、彼らから迷惑をこうむっている人への処方箋です……。攻撃欲の強い人は、目的である破壊――ターゲットを壊すあるいはターゲットのやっていることをめちゃくちゃにする――を成し遂げるまでは決して変わらないそうです。

 

攻撃欲の強い人は変わらない可能性が高い。まさに、「三つ子の魂百まで」ということわざ通りであり、あまり幻想を抱いてはいけない。「狂気を癒す方法は見つかるが、根性曲がりを矯正する方法は全く見つからない」とラ・ロシュフコーは言っているが、攻撃欲の強い人も一種の「根性曲がり」であり、つける薬はないのだと認識したうえで、どんなふうに対応するかを考えなければならないのである

 

殊勝な心掛けで接することは、夫のようなタイプには完全に逆効果ということです。世の中、こういう攻撃性の異常に高い人が、実はたくさんいる。このことをもっと早く知っていれば、避けられた結婚だったのにと思います。

一緒にいるとなぜか消耗する、イライラする人が身近にいる方に、ぜひおすすめしたい一冊です。

 

他人を攻撃せずにはいられない人 (PHP新書)
 

 

 

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*1:

 

子どもを攻撃せずにはいられない親 (PHP新書)

子どもを攻撃せずにはいられない親 (PHP新書)

  • 作者:片田 珠美
  • 発売日: 2019/07/13
  • メディア: 新書
 

 

*2:

 

DV・虐待加害者の実体を知る

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